運動量理論について(Betz限界の導出)
皆さんこんにちは、まるけーです。
久々にプロペラ設計の勉強をし直したので、基本的なところから理論を解説したいと思います。とりあえずは第一回、質量保存則、運動量保存則、角運動量保存則etcから有名なbetz限界の導出をごまかしながらやっていきたいと思います。
1.基礎となる式
運動量保存則、角運動量保存則、仕事率、ベルヌーイの定理、輸送定理は以下の式で表される。今回は、ローター後流の回転運動を無視するので角運動量保存則はおまけ。式変形書くのがめんどかった...
運動量保存則
角運動量保存則
仕事率
ベルヌーイの定理(重力無視)
輸送定理
物理量に対して
ここで、v(t)はcontrol volume、s(t)はcontrol surface、はs(t)の外向き法線速度
これらの式をActuater diskの流管モデルに適応してBetz限界を導出したいと思います。
2.導出
上の図の左から流体が速度で流入し、Actuator Diskを通って右から速度で流出する流管を考える。以降Inlet側の値を示すときは下文字i、Outlet側は下文字oで表すこととする。流れは定常で非圧縮性流体()とする。
さて、運動量保存則の(1)式を輸送定理(5)式に入れてであることを考えると、以下の式に変形できる。なおActuator diskに対し鉛直でinletからOutlet側に向かう方向をx軸とした。図に書き忘れたんだ許せ...
Diskが流体から受ける力をTとするととなる。さらに、質量保存則
より(6)式は次のように書き直せる。
別のアプローチによりTを求め、との関係を明らかにしてみる。Disk上流側の圧力を、下流側を、大気圧をとするとベルヌーイの定理(4)式から以下の二式が得られる。
上流の領域
下流の領域
この式を基にとをdisk表面で積分するとを求めることができる。
(8)式と(11)式より
ここで、を規格化して表すために軸方向誘導係数を導入すると、
なお、よりとなる。(11)式と(13)式から、
となる。このとき、仕事率は(3)式より
さて、検査体積に流入する風のパワーを求める。この断面に作用する力は、流入時の動圧より、
よって風のパワーは、
となる。パワー係数を(15)式と(17)式の比から計算される無次元数とすると、
ここまで来たら、あとは高校レベルの内容です。(17)式を最大とするの求め方は、
よって、でを取る。
疲れた...なんとかBetz限界の導出ができました。この値は、ローター後流に回転を伴わないようなローターを仮定しており、そのような理想状態を仮定したとしても風から取り出せるエネルギーは59.3%であることを示しています。
導出を終えての感想and参考文献
本当はローター後流に回転がある場合の話もしようと思ったんですけど、Betz限界出す時点で式が18個も出てきてこの先書いても誰も読まねえだろうなと思って断念しました。(決してめんどくさがったわけじゃない)次の更新は構造系の話を書くと思います。
はじめてブログで数式書いたんで表示がおかしかったら、やる気があるとき修正します。毎度のことですが間違いがあったらコメントよろしく。
参考文献
1)小池勝、流体機械工学、コロナ社
人力飛行機のプロペラ設計する人はみんな持ってるんじゃないだろうか、内容はそこまで難しくなくて親切な一冊。
2)非線形CAE協会編、京谷孝史、よくわかる連続体力学ノート、森北出版株式会社
輸送定理の導出からやろうと思って、いろいろ読んだけど長くなりそうだからやめた。流体力学の本ではあんまりEuler表示とLagrange表示について詳しく書いてないけどこの本はわかりやすく書いてあった。
言わずとしれた流体力学の名著、筆者が亡くなられたらしく後編が無いのが惜しまれる。