留年ポンコツまるけーのブログ

留年ポンコツ学生の日常と航空宇宙工学

XROTORの翼型性能近似誤差の影響

こんにちは、まるけーです。

このネタは前から書こうと思っていたんですが、XROTORへの批判というか、時代にそぐわないということが結論になってしまいます。一時代を築き上げたプログラムにケチをつけるわけですからしっかりとした内容にしたかったので、ここまでゆっくりと検証を重ねて書いてきました。まあ、プログラムが書かれたのがかなり前で、当時のコンピュータの能力を考えたらデータの扱いにケチが付いて当然ですが...

 比較方法

XFLRで取得したDAE51の翼型データを用いて、同一条件でXROTORとAdkins,Liebeckの手法で組んだプログラム(近似は用いずに直接入力データから翼型性能を得る)この2つで設計し、結果にどのような影響が出るかを比較します。

 比較するためのプロペラ設計条件は以下の通りです。

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一般的な人力飛行機の諸元を入力しました。また、翼型性能データは以下の通りです。

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XROTORにおいては根本から75%位置でのレイノルズ数(180000)を代表レノルズ数として以下のようにCl-Cdの近似を非失速域でしたものと、全体で行ったもの二種類で設計を行い比較をします。

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 非失速域のデータ

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 失速域も含めたデータ

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 設計結果と比較

 まず、設計形状の比較を行います。

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XROTORの入力データの近似を変えたものはグラフではわからない程度の差しかありませんが、Adkins,Liebeckで設計したものとXROTORではコード長分布にかなりの差があります。

次は性能の比較です。ただし推力係数\(C_{t}\)は以下のように定義します。

$$T[N], \rho[kg/m^{3}], D[m], n[rps]$$

$$C_{t}=\frac{T}{\rho n^{2}D^{4}}$$

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 設計前進率付近ではすべての設計方法でほとんど差はありませんが、設計前進率から離れると差が大きくなることがわかります。

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 上記のグラフはプロペラ半径だけを変えて設計し、効率変化がどのようになるかを示したグラフです。一般的にプロペラは半径が大きくなるほど性能がよくなりますが、翼型だけで考えた場合は反対にレイノルズ数が下がるほど性能が低下します。したがって、あるプロペラ半径を越えるとレイノルズ数低下による性能低下が大きくなり、あるプロペラ半径で効率は最大値をとります。

ここで注目してもらいたいのがプロペラ半径を大きくした時にXROTORでは効率低下が緩やかになっていることです。XROTORでは入力された翼型性能データをレイノルズ数変化に合わせて変化させる以下のような数式が組み込まれています。(詳しくはXROTORのreadmeもしくは後で紹介する論文をご覧ください。)

$$C_{D}=|C_{D(0)}+\frac{d(C_{d})}{d(C_{L}^{2})}(C_{L(0)}-C_{L})^{2}|\times(Re/Re_{ref})^{f}$$

 ある程度高いレイノルズ数域ならば補正もうまく一致するのですが、レイノルズ数が著しく低い値になるとズレが大きくなるようになります。

 まとめ

結果をまとめると

1. 設計条件付近のReで取得したデータを用いて設計を行えばデータの取り方による差は少ない

2.翼型性能のRe補正を過信して、プロペラ最適長さを求めようとするとプロペラが長くなってしまう。

結論:使い方を工夫すれば問題なさそう

つまり、問題となるのはレイノルズ数補正の部分なので設計パラメータの回転数やプロペラ半径といったレイノルズ数が変化するものを変化させる時には出来るだけデータのレイノルズ数も一致させるようにしましょう。

私見ですが、プロペラ設計が最優先すべきは「製作が容易なプロペラ」です。設計段階での数パーセントの性能向上は製作精度が悪ければすぐに無いものとなってしまいます。性能向上だけを目指し、運用性や製作性を犠牲にするのはプロペラ設計が一番やってはダメなことです。

設計で数パーセントの性能向上を目指すのは製作方法がしっかり確立されてからにしましょう。

風洞試験のデータなどと比較したい方は以下の論文を読んでください。

NON-LINEAR EFFECTS OF AIRFOIL FORCE DATA ON DESIGN PERFORMANCE OF A LOW-REYNOLDS NUMBER PROPELLER

(http://granthaalayah.com/Articles/Vol6Iss8/21_IJRG18_A08_1620.pdf)

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